相続放棄が相続税申告に与える影響
相続放棄が相続税申告与える影響をざっくり言うと
- 相続放棄は家庭裁判所に一定期間内に申立を行い受理されてはじめて成立。
- 相続放棄が受理されても、相続税が安くなることはなく、むしろ増える。
- 二次相続の相続税申告対策のために相続放棄を使うテクニックがある。
こんにちは。鹿児島で相続税に特化した業務を行っています相続税専門オフィス鹿児島の税理士中村です。
私がこの業界に入って四半世紀、コンスタントに相続税申告をしてきました。同時死亡、相続税申告期限前に相続人が死亡、相続人の一人が行方不明、相続人の中に被後見人が居る、未成年がいる、相続人の中に非居住者(外国在住)が居る…
色々な特殊なケースを扱ってまいりましたが今年、相続放棄、しかも唯一ただ一人の相続人が相続放棄というパターンははじめて扱いました。
被相続人が若い独身者でした。この場合その親が相続人になるのですが、親が相続放棄したため、被相続人の兄弟が相続人になった次第です。
相続の放棄は期限があります。
基本的に「相続の開始があったことを知ってから3ヶ月」ですが、「熟慮期間」というあいまいな判断基準日であったり、家庭裁判所に延長の申立などの制度があり、期限についてはどうにでもなる印象があります。
その3か月以内に家庭裁判所に申立を行い、受理されれば相続放棄が成立いたします。
相続放棄が受理された場合の相続税計算
相続税申告は基本的に、法定相続人が法定相続分で取得するのを前提に計算しますので、法定相続人が相続放棄しようが基礎控除額も変わりませんし、相続税総額計算も変わりません。生命保険控除も死亡退職金控除の非課税枠も変更ありません。
つまり基本となる相続税総額に変更はありません。
逆に相続税は増額いたします。法定相続人が相続放棄した場合、元々相続権がなかった方(例えば兄弟や孫)に相続権が移転しますので、棚ぼた的に相続財産を貰うので、本来納める相続税を二割増しで納める「二割加算」という制度が課せられます。
相続税対策のためにあえて相続放棄を利用する。
被相続人が独身者だった場合、相続財産はすべて親が相続いたします。例えばこれらが5000万円あったとしましょう。
まずここで1回目の相続税申告が発生いたします。
次のその親本人の相続です。年齢的に数年後にやってきます。この5000万円プラス親が元々持っていた財産、仮に3000万円あったとしたら合計8000万円となり2度目の相続税申告が発生いたします。
2度相続税を納める形になります。
この連続した相続税申告を避けるために、当初の独身者の相続で親が相続放棄をいたします。
すると被相続人の独身者の遺産は兄弟に相続されますので、第1回の相続税申告は避けられませんが、親の相続のときは元々親が持っていた3000万円のみの相続になるので相続税が発生しない、つまり相続税申告は不要となります。
相続税回避のための相続放棄はどうかと思われますが…