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遺産を寄付する場合の相続税の非課税特例

寄付した際の非課税特例が認められる理由は、遺産が社会に還元され、寄付により納税と同等の働きが果たされるからです。ただし、特例を適用するためには、租税特別措置法に定める要件を満たさなければなりません。

 

まず、遺産を寄付する方法について説明します。方法は2つあります

①被相続人が「遺贈」「死因贈与」で寄付

「遺贈」とは、遺言書による相続方法です。遺贈は法定相続人以外にも遺産を相続させることができます。相続人を寄付先の団体や施設にして遺言書を作成しておけば、その通りに遺産を寄付できます。

 
「死因贈与」とは、相続人が生前に相続先に相続する旨を伝えておく契約のことです。相続人がこの契約に承諾をしておけば、その通りに相続が実行されます。

 

②相続人が相続財産から寄付

被相続人から相続を引き受けた相続人が、相続財産を寄付することもできます。これは相続による遺産でも遺贈による遺産でもどちらでも寄付が可能です。

 
上の①の場合、寄付先が株式会社などの営利法人であっても相続税が課税されずに寄付することができます。

 

しかし、②の場合は、非課税にするには「相続税の非課税特例」に沿った要件等に注意する必要があります。

 

次に、相続税の非課税特例が使える、2つの場合について説明します。

1.相続財産を特定の組織等に寄付した場合
国や地方自治体、特定公益法人などに寄付した場合に特例を受けることができます。

特定公益法人に該当する組織とは、独立行政法人や社会福祉法人などです。

ただし、次の3つの要件すべてに当てはまることが必要です。

⑴寄付した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること
⑵相続財産を相続税の申告期限までに寄付すること
⑶寄付した先が、国や地方公共団体または、教育等の振興に貢献すると認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人(特定公益法人)であること
 

2.公共信託の信託財産に支出する場合
公共信託の信託財産に支出をする場合でも、遺産が公共の目的に利用されるため、非課税の特例が適用されます。

ただし、こちらも次の3つの要件すべてをみたす必要があります。

⑴寄付した金銭は、相続や遺贈で取得したものであること
⑵その金銭を相続税の申告期限までに支出すること
⑶公益信託が教育等の振興に貢献すると認められていること
※公益信託を利用する際には、信託銀行に委託して、受託してもらう必要があります

 

非課税特例の適用が除外される場合

次の場合は、これらの特例が適用できません。

⑴寄付を受けた日から2年以内に、特定公益法人・特定の公益信託に該当しなくなった場合や、特定公益法人が公益の目的以外に遺産を使っている場合
⑵寄付した人やその親族が、寄付先から恩恵を受けているなど、相続税・贈与税が不当に軽くなっている場合
 

このように、寄付先の組織・団体が無くなったり、相続人たちのために使われていたりするなど、社会的に還元されなくなった場合には、非課税特例が除外されます。

 

 

非課税特例を適用する際の注意点

・相続税の申告期限までに手続きを終えること

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった翌日から10カ月です。

遺産分割時に、相続人が寄付することに不満を持って協議が進まなくなり、期限に間に合わない場合もあるようです。

あらかじめスムーズに手続きを済ませられるようにしておく必要があります。手続きでわからないことがあれば、専門家に相談しましょう。

 

・相続財産をそのままの形で寄付すること

相続財産を寄付する上で大事なことは、「財産をそのままの形で寄付する」必要があることです。ここでいう「そのままの形」とは、例えば不動産であれば不動産のまま、ということです。

不動産を売って現金化したものを寄付してしまうと、特例は適用されません。

 

・寄付先が要件の定める組織であること

 寄付先として、国や地方自治体は専用窓口がありますが、特定公益法人は要件に当てはまる組織かどうか判断がしづらいです。税務署や寄付先の組織に、あらかじめ確認をとるなどしておくとスムーズに手続きできるでしょう。相続税の対策も併せて事前に税理士に相談しておいてもいいでしょう。

 

 

最後に、相続人による寄付は、その相続人が、故人の想いに従わないと実現しません。生前約束していても、反故にされてしまうことも考えられます。

 

そこで、確実性を求めるならば遺言書による寄付、となるのですが注意が必要です。

相続人には「遺留分」といって遺産をもらえる最低限の権利が決められていますので、「全財産寄付をする」との遺言書を残しても、相続人は寄付先に遺留分を返すよう請求ができます。

 

遺留分を侵害していなくても、相続人のもらえる財産が減ってしまうため、寄付先に「こんな遺言書を書くようそそのかした」などといってトラブルになるケースもあります。

 

遺言書による寄付でも、あらかじめ家族と話し合い、理解を得ておく方が良いでしょう。

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