各国の相続税について②
こんにちわ、鹿児島で相続税に特化した「相続税専門オフィス鹿児島」のブログです。
前回からの続きになります。
各国の相続税の種類
遺産取得課税方式:ドイツ・フランスなど
まず被相続人の遺産を分割。その相続財産に応じて税額を決定。相続人間で納税額に差ができ、分割割合によって相続税の合計額が変わってしまう。
遺産課税方式:アメリカ・イギリス・韓国・台湾など
まず被相続人の財産に対して課税、税金分を差し引いた財産を相続人で分割。租税回避が取られにくく、租税の執行が簡単。
法定相続分課税方式:日本
上の2つの併用。①の欠点を補うために作られた課税方式で、遺産分割による相続税額の差が出にくい。しかし、制度が複雑で手続きが煩雑という欠点も。
日本の相続税の成り立ち
日露戦争の戦費調達のために、政府は所得税や固定資産税(当時は地租)、酒税などを増税していましたが資金が足りず、1905年(明治38年)4月、欧米にあった相続税に目を付け、導入したと言われています。
当時は臨時のものでしたが、日本は日露戦争後に戦後賠償金を得られず、財政が逼迫したため恒久の税制となり、現在に至るまで100年以上続いています。
第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の下、シャウプ博士主導で相続税は抜本的な見直しが行われました。
財閥など一部の富裕層に富が集中するのを防ぐため、1950年には最高税率が90%に引き上げられ、遺産が長男に集中しないような制度にも改められました。
その後、最高税率は75%➡70%と段階的に引き下げられ、2003年の税制改正で50%になっていましたが、2015年にはまた55%に引き上げられてしまいました。
2015年の改正では、課税対象も広がっています。
非課税枠の基礎控除が4割縮小
5000万円+1000万円×法定相続人の数 ➡ 3000万円+600万円×法定相続人の数
この改正により、亡くなった人全体に占める課税割合は4%台から6%台に上がると言われています。また、相続税の土地評価の基準となる路線価が、現在大都市圏を中心に上昇傾向にあるため、課税対象はさらに増えると思われます。
海外の動向
これに対して海外では、相続税を廃止にする国があり、そもそも相続税が存在しない国も多いです。
カナダ・オーストラリア 1970年代に廃止
ニュージーランド 1992年に廃止
スウェーデン 2004年に廃止
マレーシア・シンガポール・中国 なし
他にも現在、相続税のある国で廃止する方向に進んでいる国もあり(イギリス・ドイツ・フランス等)、逆に新興国では相続税を採用しようとする国もあります(中国・インド等)。
新興国では、個人の資産を把握できないために相続税を導入してない国も多いですが、それとは別に先進国でも、政治的に相続税がないことを売りにしている国もあります。これは、海外の富裕層を自国に招き入れるためです。
持っている者から税をとって、税収を増やそうとする日本と、優れた人材を取り込むために、税を軽くして成長を目指す諸外国。税制からそれぞれの国の思惑が見えてきます。